大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台地方裁判所 平成2年(わ)365号 判決

国籍

朝鮮

住居

宮城県柴田郡柴田町西船迫一丁目二番地の五

会社役員

高山秀吉こと申秀吉

一九五一年五月六日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官五十嵐義治出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年四月及び罰金二一〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間、右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、宮城県柴田郡柴田町西船迫一丁目二番地の五において「グランドチャンピオン」という名称で遊技場を営んでいたものであるが、昭和六二年分及び昭和六三年分の各所得につき、それぞれ、自己の所得税を免れようと考え、あらかじめ、売上金の一部を除外してそれを仮名の預金口座に預け入れ、実名の預金口座にはその残りの分だけを入金しておくなどの方法で、ことさら所得を隠したうえ

第一  昭和六二年分の実際の所得金額が五五五八万八六一六円で、右につき正規に申告すべき所得税の額が二五三九万六七〇〇円であるのに、同年分の所得税の申告期限である昭和六三年三月一五日までに、所轄の大河原税務署長に対し所得税確定申告書を提出しないで、その期限を徒過し、もって、不正の行為により、右の申告すべき額である二五三九万六七〇〇円につき所得税を免れ

第二  昭和六三年分の実際の所得金額が一億二五二八万二九五四円で、右につき正規に申告すべき所得税の額が六四二七万七九〇〇円であるのに、平成元年三月一五日、大河原税務署長に対し(仙台中税務署を通じて)、その所得金額が一八三〇万七四二五円で、これに対する所得税の申告納税額が三七四万二七〇〇円にすぎない旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もって、昭和六三年分の正規に申告すべき所得税の額と右の申告納税額との差額である六〇五三万五二〇〇円につき所得税を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  押収してある所得税の確定申告書二枚(平成三年押第一〇号の符号一及び二)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(二通)及び脱税額計算書説明資料

一  高山英美(二通)及び松田相吉の大蔵事務官による各質問てん末書

一  高山こと具英美及び松田こと全相吉の検察官に対する各供述調書

一  被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書(二五通)

一  被告人の検察官に対する各供述調書(二通)及び当公判廷における供述

(法令の適用)

被告人の判示各行為は、各年分ごとに、所得税法二三八条一項に当たるところ、いずれについても、所定刑中懲役と罰金の併科を選択する。

そして、右は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については、同法四七条本文、一〇条により、犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、また、罰金刑については、各罪につき、それぞれ、所得税法二三八条二項を適用して免れた所得税の額に相当する金額以下で処断することとしたうえ、刑法四八条二項により、右の各金額を合算した金額の範囲内で、被告人を懲役一年四月及び罰金二一〇〇万円に処し、換刑処分につき刑法一八条、懲役刑の執行猶予につき同法二五条一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 本郷元)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例